人を知る
PEOPLE SHINCHOSHA

Profile
1997年入社。
FOCUS編集部、コミック事業部、広告部を経て2008年より新潮選書編集部、2021年4月編集長に就任。
入社以来、写真週刊誌の事件記者と芸能記者、コミックスの編集、携帯サイトの運営、広告の営業、そして選書の編集をしてきました。それぞれまるで違う仕事内容で、同じ会社にいながら何回も転職を体験できたようなお得感があります。約480名という新潮社の規模は、上記の通り仕事内容の多様性が担保される一方、社員1人1人の個性が認知され、「無色透明な歯車」扱いされないという点で、大きすぎず小さすぎず、ちょうど良い塩梅だと思います。
現在は新潮選書の編集長として、レーベル全体のマネジメントに携わりつつ、自らも新刊本を編集しています。選書はいわゆる学芸書と呼ばれるジャンルで、「学」を究める研究者に、「芸」を発揮してもらい、一般向けの本を書いていただくという仕事です。
具体的には、大学の教授などに「あなたの論文や本を読んで、このような点が面白いと思ったので、こういうテーマで一般向けにわかりやすく本を書いていただきたい」とお願いし、頂戴した原稿にたいして感想や意見を伝えて推敲してもらい、本のタイトルや帯の惹句や内容紹介コピーを考えたり、販促宣伝の戦略を立てたりして、総合的にプロデュースしていきます。
学芸書は新聞の書評面や文化面の記事の対象になりやすく、またさまざまな学芸賞・論壇賞が設けられていて、自分が担当した本が狙い通りの評価を得られたりすると、とても嬉しくなります。今一番力を入れているのは、やはり新しい著者の発掘です。とても面白いのに、世間に知られていない研究者がたくさんいます。そのような逸材の研究を一般向けの本にまとめて、世の中の既成概念に一石を投じることは、とてもやりがいのある面白い仕事です。

入社後一番の思い出
新人時代に写真週刊誌『FOCUS』の記者として過ごした、嵐のような5年間は忘れられません。神戸連続児童殺傷事件をはじめとする事件取材、芸能スキャンダルの張り込み取材、体力的にも精神的にも本当に大変でしたが、取材力、文章力、企画力、人脈力、トラブル対応力など、編集者に必要とされる能力の土台は、週刊誌時代に培われたような気がします。
ある日のスケジュール
- 6:30
- 起床。妻と交替制で、子どもの朝ごはん、弁当作づくり。子どもを送り出した後、紙の新聞を書籍広告欄も含めてじっくり読む。新聞は選書の企画を考える際の最大のネタ元。
- 9:00
- 午前中は、自宅で集中して仕事をすることが多い。メールの返信、著者の原稿を読んだり、本のコピーや紹介文を書いたりしていると、あっという間にお昼前に。
- 12:00
- 全国紙の文化部記者とランチ。新刊の案内がてら、情報交換をする。やはり一緒にご飯を食べるのが人間関係を作る基本だと思う。
- 13:30
- 出社。会議、打ち合わせ、その他の仕事をこなしているうちに、気がつけば夕刻に。
- 19:00
- 著者と新刊の打ち上げ。仕事の打ち合わせは基本的に昼間にするので、著者とお酒を飲むのは打ち上げの席が初めてということも多い。出来立てホヤホヤの本を肴にお酒を飲むのは至福の時間。研究者やメディア関係者が集う勉強会などが入る日も。
- 24:00
- 就寝。最近はすぐ眠くなってしまうので、本があまり読めないのが悩み。
Off-Time
「出版カップ」で6回の優勝を誇る新潮社サッカー部で20年以上プレーするも、試合中に右膝前十字靭帯を断裂し、40代半ばで引退。最近は「晴耕雨読」に目覚めて、近所で借りた畑で野菜作りに勤しむ日々。


就職活動中の皆さんへ
就職活動は、採用する側も採用される側も真剣勝負、全力で臨むものですが、それでもお互いほとんど何も分かりあえないまま、結果が決まってしまう不条理な世界です。ですから、受かっても落ちても、結果は「たまたま」だと思って、慢心することも卑屈になることもなく受け止めるのが大切かなと思います。
人材の流動化が進み、第二新卒・中途採用で入社できるチャンスも増えてきました。たとえ新卒で意中の会社に入社できなくても、とりあえず別の会社で働いてみて、もし納得がいかなければ、再挑戦してみるという手もあります。かくいう私も銀行からの転職組です。他の業界・他の会社にいたからこそ、出版業界や新潮社の長所(と短所)がはっきり見えて、この仕事に対する愛や覚悟が深まったように思います。
良くも悪くも就職活動は一つの通過点にすぎないので、そのつもりで伸び伸びと挑戦していただければ幸いです。幸運をお祈りします。